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肺系統の重要部分のみの概括

 

 (一)肺は気を主り、宣発と粛降の働きがあり、呼吸を司り、水道を通調するので、肺に病変が生じると、気液の宣降失調が基本病理となり、呼吸障害・咳嗽・喀痰などが主症状である。

 

 (二)肺は嬌臓(デリケートな臓器)であり、呼吸を司り、皮毛に合しているので、外邪の侵襲を最も受けやすく、寒熱燥湿いずれの刺激に対しても容易に影響を受けやすい。感冒や鼻炎など、肺系統の疾患が日常的によくみられるのはこのためである。

 

 (三)肺の宣降機能は、他の臓腑の気機と協調したり制約を加えたりする作用を持ち、心を補佐して営血の運行を推動するなど、肺臓特有の他臓との有機的な関連性の特長を把握した上で、それぞれの病機と治法を修得し、実際の臨床に応用すべきである。

 

 ●肺衛の意味

 肺衛という用語は中医学で頻繁に使用されるが、使用される状況によって微妙に意味が異なるようである。主として肺気の宣発と表衛の関係や、肺気の宣降と衛気の関係にもとづく用語で、「肺が主る衛外や表衛(体表衛分)」「肺および衛」「上焦肺経および衛陽(または表衛)」「肺気と衛気」などの意味が考えられる。

 また、皮毛の生理機能を肺衛(肺の衛り)として概括することも多く、つまり肺を護衛する役割としての皮毛の機能を指すなど気機や陽気の名称であったり、また病位を示す用語であることも多く、意外に注意を要する用語である。

 ところで、同業のK先生は解剖学的なイメージで「肺葉内を流通する衛気および衛分」が肺衛であり、「表衛は、口腔・鼻腔から気管および気管支の各内壁表層(皮毛様組織)を経て、肺胞嚢の内壁表層と連続かつ連動しており、この肺胞嚢の内壁表層の皮毛様組織を流通する衛気および衛分が肺衛である」と認識しておられるそうであるが、大変興味深い御発想である。

 ここで筆者なりの考察と補足をさせて頂ければ、「肺衛」は表衛との直接的な連続関係に重点を置いた名称であるからには、むしろ表衛を含めて口腔・鼻腔・気管・気管支・肺胞嚢に至る内壁表層すべてを包括して「肺衛」と見るべきだと考えている。そして、上記傍線部の「肺胞嚢の内壁表層を流通する衛気および衛分」のみを取り出して見たときの肺衛は肺気および肺なのであり、同様に口腔・鼻腔・気管など大気が呼吸によって出入りする通路のみを取り出して見たときの肺衛は肺系であり、体表のみを取り出して見たときの肺衛は表衛なのである。

 このように把握しておけば、同じ肺衛の病変であっても、発熱悪寒・無汗・頭痛・体痛などの衛陽(表衛)の鬱滞を主とする風寒客表の麻黄湯証と、咳嗽・痰涎・胸脘痞悶などの肺気の宣降失調を主とする風寒襲肺の杏蘇散証のように、風寒表証において肺と衛の病変の重点が異なる現象の説明にも対応することができる訳である。

 

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