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漢方処方新見解 >
参苓白朮散は、一般的には脾虚湿盛(脾胃気虚による水湿内盛)の病機に対する方剤として繁用されるが、脾の気陰両虚に対する方剤としての側面や、脾虚によって生じる気血両虚に対する方剤としての側面も忘れてはならない。
中焦の脾土は万物の母であり、水穀精微の運化を主り気血生化の源であり、後天の本である。それゆえ、脾土が虚衰して運化機能が低下すると、五臓六腑の濡養不足を来たして各種の病証を誘発する。
①脾虚によって水穀精微が運化〔消化・吸収・運輸〕されず、気血の原料不足による気虚や血虚の症候が現われる。
②脾虚のために水穀精微の生成不足により脾臓の陰血と津液が欠乏して脾陰虚が生じる。
③脾虚による水湿の運化不足により湿邪が内盛する。
④湿邪が中焦気機を阻害すると昇降失調を来たして胃が和降できなくなる。
⑤脾気虚衰によって脾土の子である肺金にも影響して肺気が衰え、湿聚生痰から肺気の宣降失調を誘発する。
参苓白朮散は、このように脾虚によって誘発される各種の証候に適応する方剤であり、脾虚気弱に対するかなり全面的な方剤と言える。
舌証については、脾虚湿盛が主体の病証では、胖大で淡紅の舌質に白膩苔を伴うことが多いが、脾陰虚が主体の病証では、胖大であっても紅絳の舌質であることが多く、少苔や花剥苔・地図状舌であることが多い。
脾胃気虚が遷延すると、脾陰が滋養されなくなって脾陰虚を伴うものである。それゆえ、脾虚気弱に対して一般的な補気健脾の方剤を用いても、期待するほどの効果が発揮されない場合は、方剤中に脾陰虚に対する配慮が欠けているためと思われるので、参苓白朮散を使用してみるとよい。
また、補気健脾方剤の選択に迷うような時には、暫定的に本方を投与してみるのも一つの方法である。
一般的な脾気虚の症状とともに口唇の乾燥・指先の角質化・手足の熱感・身体の熱感・皮膚の乾燥などの症状を伴うときは、脾陰虚の症候が顕著であるので参苓白朮散が適応し、特定の疾患では潰瘍性大腸炎・慢性膵炎・慢性腎炎、あるいはアトピー性皮膚炎などで使用する機会がある。
また、元気がない・疲れやすいなどの気虚の症状とともに、頭のふらつき・目がかすむなど明らかな血虚の症状が見られるとき、一般的な気血両虚との判断から十全大補湯を投与すると食欲減退・身体の熱感・泥状便などが生じて逆効果となり、気虚血少に対する帰脾湯や補中益気湯で効少なく、結局は参苓白朮散でなければ治療効果を発揮出来ない気血両虚もあるので、注意が必要である。
【参考文献】
①「図解 中医方剤マニュアル」(何金森著/植村澄夫訳 東洋学術出版社)
②「中医臨床のための方剤学」(神戸中医学研究会編 医歯薬出版)