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肝胆系統の病機と治法の概括



 特に注目すべきは、陳潮祖先生が『中医病機治法学』で提示される以下の二項目の見解である。

①肝の疏泄機能は、気血津液精という五種類の基礎物質の運行調節を統括管理するものであるが、このことは「肝が筋膜を主っている」ことと関連があるのであろう、との見解である。

②少陽三焦は、膜原と腠理の二つの組成部分を包括したものであり、表裏上下のあらゆるところに存在し、五臓六腑・四肢百骸の組織と連絡し、津気が昇降出入する通路となっている、との見解である。

 

 少陽三焦とは、陳潮祖教授が御高著で指摘するように、膜原と腠理から構成される機能体を指している。そしてこれらは肌表、五臓六腑、四肢百骸の各組織と連絡し、津と気が昇降出入する交通路となっているものである。



 
膜原(まくげん)は臓腑や各組織器官を包み込む膜のこと。

 腠理(そうり)とは、膜外の組織間隙のこと。


 もっと詳細に述べれば、
腠理というのは、皮膚・肌肉・筋腱・臓腑の紋理や間隙などの総称であり、皮腠・肌腠・粗理・小理などに分けられる。腠理は体液のにじみ出る所であり、気血が流通する門戸であり、外邪が体内に侵入するのを防御する働きがあるなどと解釈されるのが一般であるが、
下線部の「気血が流通する」とい点については疑義があり、「気津が流通する」というように、気と津に限定すべきだと愚考する。血を全面的に含めてしまうと、あまりにも流通物質が拡大し過ぎるので、主として気と津とにある程度限定的に捉えたほうが合理的であろう。

参考文献:
猪苓湯と少陽三焦

 

 ●肝の疏泄機能と筋膜の関係

 肝は蔵血の臓であり、胆汁の生化輸泄を主り、血量の調節と胆汁の輸泄を包括していることは一般常識となっているが、気血津液の疏泄調節と肝が主る筋膜との関連については、まだまだ重視されるに至っていない。

 すなわち、供血運行する脉絡と、胆汁を輸送する胆管など諸々の管道は、いずれも肝が主る筋膜によって構成されており、しかも筋膜組織に属する膜原と腠理は、三焦の組成部分でもあることを認識する必要があるのである。膜腠(膜原と腠理)は、衛気が昇降出入する所であり、水液が運行出入する道である。それゆえ、脉絡・胆道など諸々の管道、および膜腠に多少とも変化が生じると、すぐに気血津液の流通に影響する。これとは逆に気血津液の盈虧と通暢に異常があれば、直接筋膜に影響して病変が発生する。なぜなら、筋膜の和柔活利のためには、陽気の温煦・血液の滋栄・陰津の濡潤を必要としているからである。

以上は、

肝の疏泄機能は気血津液精という五種の基礎物質の運行調節を統括管理しているが、このことは「肝が筋膜を主っている」ことと直接関連がある、とされる陳潮祖先生提示された学説の根拠である。

 

 

「肝の体陰用陽」の意味するもの

 

 五臓はすべて「体陰用陽」であり、何の変哲もない中医学の基礎理論の一つに過ぎないと思われるのに、どうしてわざわざ「肝」についてのみ、「体陰用陽」を特別に強調する必要があるのであろうか?

 訳者が種々の文献類で調査し、考察・検討を加えた結論では、

 「肝は蔵血の臓であり、血は陰であるから肝の実質は陰である。肝は疏泄・昇発・筋の活動などを主り、内に相火が寄り剛猛な性向があって容易に化火動風するので、肝用すなわち肝の機能は陽に属し、肝体と肝用は相互に依存する。」

 という肝の特徴を特別に強調する為の象徴言語とされているようだ、ということである。 もとをたどれば、中国の清代の名医葉天士が、《臨床指南医案・肝風》において「肝為風木之臓、因有相火内寄、体陰用陽、其性剛、主動主昇」と述べた文章が土台となっており、後世において「体陰用陽」という用語だけが、シンボリックな表現として一人歩きし始めたのではないかと思われるのである。

 ところで、肝の体陰用陽のみを取り上げて分析すれば、「肝の実体(実質)は陰血であり、肝の作用(機能)は陽気である。」ということであるが、より簡潔に表現すれば「肝は血を以て体と為し、気を以て用と為す。」ということになる。これは、文匯出版社発行の『中国歴代中医格言大観』における肝の体陰陽用に対する注釈文であり、本書に従えば、肝は血を以て体と為し、気を以て用と為すので、肝は「体陰用陽」と云われるのである、ということである。

 このように、「肝の体陰用陽」という用語のみに着目すれば、当然と云えば当然の中医学基礎理論の用語法の一つに過ぎない訳である。

 ところが、体陰用陽はいつの間にか、前述の「肝為風木之臓、因有相火内寄、体陰用陽、其性剛、主動主昇」という葉天士の述べた主旨を喚起するための枕詞や象徴言語として使用されるようになり、次第に葉天士の述べた主旨のすべてを意味する用語として、定着するに到ったと思われるのである。

 ところで、すべての疾病は、多かれ少なかれ必ず肝と関連するので、もしも難病奇病であらゆる治療に抵抗する場合は、肝胆系統との関連性に基づいた病機分析を行えば、有効な打開策が見付かることが多いといわれる。たとえば、一九八九年に発行された朱進忠著『難病奇治』(科学技術文献出版社重慶分社)は、大いに啓発される内容である

 

●附録●中医眼科学における西洋医学検査の重要性について

 

 眼科疾患は、西洋医学と同様に中医学においても眼科の専門科があるように、かなり特殊な領域である。現代の中医学における眼科治療においては、正確な弁証論治を行う上で、西洋医学的な病態認識が必須事項となっている。それゆえ、必ず西洋医学の眼科専門の設備の充実した医療機関における検眼検査等の詳細な西洋医学的診断が求められる。

 

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