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中医学では繁用されながら、日本国内では流通量の少ない中草薬に「鬱金」がある。性味は辛苦寒で、帰経は心・肺・肝・胆と作用領域が広く、効能については、①活血止痛・②行気解鬱・③清熱涼血止血・④清心開竅・⑤利胆退黄など、単味でこれほど多方面の効能を持つ中草薬も珍しい。
御承知のように中医学における鬱金は、日本国内で「ウコン」の名で流通しているものとは別物である。日本市場の「ウコン」は原植物名をあてたもので、中医学では「姜黄」に該当する。
中医学上の鬱金は日本の植物名における[1]ウコン(中国の植物名では姜黄)や[2]ハルウコン(中国の植物名では鬱金)または[3]ガジュツ(中国の植物名も莪朮)類の塊根である。
いっぽう、中医学上の姜黄は[1]や[2]の根茎を指しており、これこそが日本国内における「ウコン」の名の市販品に該当する。また[3]の根茎は中医学・日本市場ともに莪朮である。
以上のように、中医学上の鬱金と姜黄の違いは、決して植物の品種の違いではなく、主には同一植物における薬用部分の違いなのである。
なお、中医臨床においては鬱金類の効能の特徴にもとづいて「広鬱金」と「川鬱金」の二系統に分類して使用され、前者は行気解鬱に長じる[1]の塊根であり、後者は活血化に長じる[2][3]の塊根である。
ところで、広鬱金[1]の主産地は四川省であり、川鬱金[2]の主産地は浙江省であるから、川鬱金の「川」を四川省の意味に取ってはならないのだが、「中薬材」関係の書籍では[1]の主産地が四川省であることから、広鬱金であっても川鬱金と称することが多いので、決して混同してはならない。
中医学における鬱金の適応領域は多岐に渡っており、肝臓・胆嚢・胃腸・脳血管・心臓・肺臓・泌尿器系・婦人科系などの各種疾患、および各種の出血証に対する要薬であるだけに、日本のウコンと混同を避けるために、鬱金の別名である「玉金」と称したほうが無難である。
日本市場のウコンは中医学における姜黄であり、玉金とは寒熱が相反し、効能もかなり異なっているので、混同して用いてはならないのである。