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漢方薬小論文集

 陰虚による舌炎・口内炎について

 

 麦門冬湯で有効であったべーチェットによるものも含めた口内炎や舌炎に、数例ではあるが同一の病人に対し、心・肺・腎に帰経して胃には帰経しないことになっている「西洋人参」を用いて比較実験してもらったことがある。結果は全例に有効で、べーチェット患者の場合では麦門冬湯以上に効果的であった。 実験例が少数であるから速断は出来ないが、このことからすると、実際には西洋人参は胃にも帰経している可能性があり、さらには多少とも五臓の陰の大元締である腎陰をストレートに滋補出来る分、麦門冬湯よりも効果的なこともあり得るのかも知れない。

 陰虚が原因で引き起こされた舌炎・口内炎では、「腎陰虚」によるものがあり、また他臓の陰虚との併存によって誘発している場合もあるので、六味丸や麦味腎気丸・知柏腎気丸などが適応したり、あるいは麦門冬湯などと併用しなければならないこともある。

 方剤の選定時には、当然、主訴の舌炎や口内炎とともに一連の症候に基づいて弁証するが、経験上は舌証に陰虚の徴候が認められ、同時に腎陰虚の症候が認められる場合でも、胃弱を訴える者には腎陰虚に対する方剤は使用せず、西洋人参や麦門冬湯加西洋人参で様子を見ることにしているが、胃を傷害することなく効果的で無難という印象である。

 また、気陰両虚・心火旺盛で胃弱の口内炎には清心蓮子飲が良いが、漠然と陰虚証があって胃腸虚弱という場合は、脾陰虚の虚火上炎による参苓白朮散証などのことがある。舌が胖大である筈だから比較的鑑別しやすいようであって、現実には麦門冬湯証や清心蓮子飲証と紛らわしい。但し、筆者の経験では本証の口内炎は少数であった。

 舌炎・口内炎は五臓のいずれの陰虚でも虚火上炎によって発生し得るので、どの臓の陰虚が原因であるのか正確に弁証して適切な方剤を用いるべきである。もしも特定するのが困難であったり胃弱傾向がある者では、麦門冬湯や西洋人参あるいは麦門冬湯加西洋人参、ときには清心蓮子飲などで対処した方が無難であり、かつ有効であると思っている。

 また、胃弱の問題はなく、明らかに腎陰虚が併存している場合は、訳者は好んで麦味腎気丸の製剤を用いて麦門冬湯と併用したことが多く、幸いにいずれもかなりな即効を得ている。

 但し、陰虚による舌炎・口内炎と思われても、陰虚の誘発原因となった胃熱や気鬱化火あるいは五志過極などによる実火が残存していたり、別の原因による実火が併存している場合は、虚火と実火が互結している可能性が強いので、石膏類や黄連解毒湯・竜胆瀉肝湯など適量の清熱瀉火を併用すべきである。

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